写真展 LAND'S END〜この世の果て( by 野寺治孝さん)
2007.09.30 Sunday
『海の日』シリーズや『TOYKO BAY』などの写真集や各種有名雑誌、松任谷由実さんPEZ'Sのジャケット写真等でも有名な、写真家野寺治孝さんの写真展が、東京水道橋にて只今好評開催中です。
(注意〜写真は携帯電話のカメラで撮影したものですのでかなり荒くなっています)
以下、野寺治孝さんのHPより転記させて戴きます↓
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写真展『LAND'S END』
野寺治孝写真展『LAND'S END』開催のお知らせ(2007.8.1)
1年半ぶりの写真展を開催いたします。昨年6月に行ったイギリスのコンウォール地方とロンドンの写真です。みなさんお誘い合わせのうえご来場ください。
日時:9月28日(土)〜10月14日(日)午後12時から19時まで
場所:UPFIELD GALLERY(東京都千代田区三崎町3-10-5 原島第3ビル304)
TEL:03-3265-0320
最寄り駅:JR水道橋西口徒歩3分
※作品の販売、オークションもあります。
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今回僕は、野寺治孝さんに声を掛けて頂き、この写真展『LAND'S END』の為のテーマ音楽を作曲させて戴きました。
曲は全曲ソロピアノで演奏アレンジしてあります。
会場で流れているテーマ曲CDは、写真展開催中の特別限定企画として、会場でのみ購入できます。
この機会にぜひランズエンドの世界を体験して下さい(o^-')b
10/6には野寺治孝さんのトークショーもあります。
ある時の野寺さんが少し照れながら、でも照れずに真っ直ぐな目で言った言葉。
『僕の夢はね...酔ったから言うんじゃないけど...写真を通した世界平和です。』
シビれた。人前に出ると照れ隠しで逃げる自分が恥ずかしくなった。
ウレシしかった。こう真っ直ぐに言える生き方ってカッコいい。
間違いなく、野寺さんはそれを実践していると思う。
6日、僕もまた会場に遊びに行くつもりです
あなたもぜひ、あなた自身のランズエンドを感じて下さい。
ぜひ会場でお会い出来たらいいですね
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野寺治孝写真展の為の音楽
『ランズエンド組曲〜この世の果て』
写真:野寺治孝 音楽:江口貴勅
野寺治孝さんの写真は、どちらかというと人物より風景の方が多い... そう思い込んでいたのですが、今回コラボレートさせて戴くにあたって、野寺治孝ワールドにどっぷりと浸かりながら曲をイメージしてゆく過程で、そこに写っていない人や匂いや肌に触れる風、日差しの温かさなど、ありとあらゆるその場所にあったであろうたくさんの事が、一枚の写真の中に納められている事に気がつきました。
写らないものが映っていることに気がついた時、『強者どもが夢のあと』ではないけれど、それに似た切なさとか優しさやとか、哀しみ、ほろ苦さ、不思議な哀愁を感じます。
二度と戻ることのない、その一瞬だけに存在し得た何か...。
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野寺さんの写真をじっと眺めながら、いつの間にか僕は、ある日の出来事を思い出していた。
当時学生だった僕は、東京に上京して都会の生活にもすっかり慣れてきた初冬のある日。
深夜最終電車の乗り継ぎの蘇我駅で(当時はとても待ち時間が長かった)最後の電車を待ちながら、頭の中をいろんな事が巡ってく。
今日の出来事、明日の課題、音楽の事、どうでもいいこと、友人の事、遠い家族の事、誓い、夢、妹との約束、これからのこと、いろんなこと、よしなしごと...
そして...
あるのは、ただ
何も変わらない現実。
電車を待つ冬の空の下。
線路を隔てた向こう側の景色を、ただボーッと眺めながら、少しだけ視界は、吐息に白く霞んだ。
...。
... あれ?
今まで気がつかなかったけど、こんなとこに花壇があったんだ...
いままで毎日ここを通ってるのに、気がつかなかった、小さな線路脇の花壇。
この草花は、誰かがきちんと気がけて手をかけ育ててるんだ...
次の瞬間、その誰かが、目の前で手入れをいている姿までもが、鮮やかに目に浮かんできた。
そしたらその横の石ころも、線路も柱も、すべてそれを作った人がいて、運んだ人がいて、ちゃんとそれじゃなければいけない寸法を設計した人がいて...その目に映るありとあらゆるものから、人の姿や想いやいろんなことが感じられて、(ああぁぁ...と)寒空の下で、ただただ全てが愛おしく、胸があったかくて、涙があふれてきた。
きっと...
もし(その時)僕がカメラを持っていたら、間違いなくシャッターを押したと思う。
その愛おしい全てを、ただひたすらに。
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そんなあの日のことを、僕は今も忘れてはいなかった。
野寺さんもきっと...
スリ減るくらい見つめたランズエンドの写真の中から、野寺さんのシャッターを切る音が、聴こえてくるようだった。
イギリスの最西北端にある、この世の果てと呼ばれるランズエンド岬。
実際にはランズエンドへ行った事はないけれど、僕は、そこに息づく風景や人や花や海や空に、希望を感じる。
写真など殆ど撮った経験のない僕には、野寺さんのような素敵な写真は一生かかっても到底取れっこないだろうけれど、でもピアノなら弾ける。
だから写真家野寺治孝の気持ちになって、僕も僕なりの方法でシャッターを押した。
組曲ランズエンド〜この世の果て
1.迷い人〜果てなき果て
2.記憶〜漁夫の小屋から
3.故郷〜忘れな草のコラール
(作編曲&演奏 江口貴勅)
LAN'S END SUITE
1.The Astray...the last end that not is / over the horison
2.A recollection〜from a fishman's hut
3.Home〜Chorale of a forget-me-not
(music by Takahito Eguchi)
今回収めた3曲は、感じたままに即興演奏したスケッチの中から抜粋した3曲で、短いながらにも、ひとつの物語になっている。
一人の旅人のたどり着いたこの世の果て、そこに待っていたものは...
1曲目の『The Astray』では、旋律は無調性と調性を行き来し、繰り返される苦悩と希望、浮かんでは消える旅人(迷える人)の揺れる心の動きを表現した。
見つめるその水平線の彼方、やがて彼は何を見るのだろうか。
2、最初は舟歌という題名だったが、修正して記憶にした。
そこにある小船や小屋から感じられる人々の生活、風、潮風の匂い、船を漕ぎ漁をする漁夫の姿を現すリズムと旋律。地の果てにも息づく人のエネルギーの力強さ。
それを見つめる旅人(訪問者)の音楽。
3、ランズエンドのテーマとも言えるこの曲。
僕の感じるランズエンド(この世の果て)は、けして荒れ果てた地の果てではなく、そこに済む人々にとっては大切な愛すべき故郷であり、変わることなく在り続ける、たくさんの人生の詰まった想い出の土地。訪れた旅人の心を優しく包みこんで、大切な何かを思い出させてくれる、そんな場所なのだと感じた。
どんなに変わっても、いつも変わらず、あり続ける、帰るべき場所。
忘れな草(foeget-me-not)の花言葉は、『私を忘れないで下さい』なのだという。
(けして忘れてなどいないから...)
遥か異国のランズエンドの風が、幼き日に過ごした日本列島の端、長崎の懐かしい匂いと記憶を鮮やかに甦らせる。
そしてこの音楽を、僕は『故郷 (Home) 』と名付けた。
6日はいくべ!