舞台『見知らぬ女からの手紙(シュテファン•シュバイク作)』
2013.06.09 Sunday
<西島千博さん出演の舞台『見知らぬ女からの手紙(シュテファン•シュバイク作)』>
先日ミラノ在住の友人のピアニスト吉川隆弘さん(現在ミラノ在住の素晴らしいクラッシックピアニスト)のオールショパンリサイタル』が東京の白寿ホールで行われました。
いつにも増してとても素晴らしい内容で、特に『葬送』などその祈るような慈愛に満ちた深く大きなスケールの演奏には、人目を憚らず客席でひとり”ナダソウソウ男”と成り果てた江口でしたが(その詳細についてはまたの機会に!吉川さんごめんね!)、その打ち上げパーティの席で初めてお会いした西島千博さん(ダンサー&俳優)と、すっかり意気投合したのでした。そして今回のこの舞台『見知らぬ女からの手紙』のお誘いを頂きました。
実は、西島さんの奥様(女優の真矢みきさん)が出演されていたテレビドラマ「陽はまた昇る」の音楽を、以前僕が担当させて頂いたことがあり、会話中その事が分かると、西島さん、そっと席を外した隙に真矢さんに電話をして、わざわざその場に呼んで下さるというサプライズ!(感涙)
「ちょっとご挨拶だけでも…」と言いながらのこの気配り。お二人の”縁”を大切にされる姿に、感激し頭が下がる想いがしました。果たしてそういうことが自分はできているだろうかと、恐縮するやら尊敬するやら恥ずかしいやら、、、全く以て脱帽です。。。
西島さんご夫婦は、お二人とも誰の前でもホントに気さくで、一緒にいると自然と楽しく温かい気持ちにさせる、とても魅力的で笑顔の絶えない素敵なご夫婦なのでした。きっとお二人はこんな風に、出会う人達をどんどんファンにしてしまうんだろうなぁ〜♪
(、、、と少し話は反れましたが、本題に)
そして今日、そんな西島千博さんご出演の舞台『見知らぬ女からの手紙』を観てきました。
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『見知らぬ女からの手紙』のあらすじはこちら
リンクが上手くいかない方の為に、上記『PARCO STAGE』さんのページから、紹介文を転記させて頂きます↓
PARCO THEATER 40th Anniversary
Director’s Choice『見知らぬ女の手紙』
PARCO Tryout 2013 パルコ劇場ドラマリーディングシリーズ Vol.4
公演日程:2013年6月8日 (土) 〜2013年6月9日 (日)
作:シュテファン・ツヴァイク
演出:行定 勲
出演:中嶋朋子 西島千博
会場:パルコ劇場
料金:4,000円(全席指定・税込)
一般発売日:2013年5月18日(土)
ベートーベンのピアノソナタとともに、女はその狂気の刃をむく
抑圧された心の奥に潜む、狂気をテーマとした
女性モノローグドラマ「見知らぬ女の手紙」
ドイツ文学の旗手・シュテファン・ツヴァイクによる、
手紙をモチーフとしたモノローグドラマ、「見知らぬ女の手紙」。
恋のやりとりにおいて、通常では到底考えられない思慕の念。
その、常軌を逸したともいえる情念にとりつかれ、手紙に託し、一方的に思いを伝える女。
お涙頂戴的恋愛小説には決してなりえぬ、激しさを描いた、ツヴァイクの傑作。
2007年8月から不定期に行われている演出家たちの「こんなことやってみたい」をドラマリーディングでかたちにする『ディレクターズチョイス』第四弾。
今回は本シリーズで行定勲が演出したシュテファン・ツヴァイク作『見知らぬ女の手紙』をふたたび上演いたします。
2008年に中嶋朋子によって演じられたこの「女」は、その完成度は高く、「怖いけど、また観たい」と言わしめました。そんな声に応えての上演となります。
どうぞご期待ください!
<ストーリー>
世界的なピアニストは、演奏旅行で一年の大半は自宅を留守にする。そんなある日、久々に自宅に戻ってみると郵便物の束の中に、妙に分厚い、しかし見覚えすらない文字でつづられた女からの手紙が届いていた。
まったく知らない女である・・・。
その手紙はこう記されていた。
まもなく28歳を迎えるというその「女」は自分の12歳の時の話を始めた。12歳と言えば小学校でいえば6年生。
そんなある日、「女」の家の真向かいにピアニストが越してくると聞いて胸をときめかせたのだそうだ。それは恋心というより、好奇心。なぜなら、威厳のある神々しいピアニストが現れることか、と想像していたから。
ところが若くて、恋心を焦がさせるような、あ・な・たが現れた・・・。
その日から「女」はあ・な・たとの人生が始まった・・・というのだ。
この時は道路ですれ違いざまに声をかけてもらったにすぎなかったのだが、それからひたすら、あ・な・たの行動を、絶えず観察し、追っていたそうだ。
それから6年が経ち18歳になり、肉体的にも女になっていた。
そんなある日、あ・な・たは、「女」に声をかけた。それも女として求めて・・・。
あ・な・たは気まぐれとしてその女と関わった。わずか、3日くらいの生活をともにして・・・・。
演奏旅行から帰ったら連絡すると約束したが、あ・な・たからの連絡はない。
しかし、女は、ひたすら待ち続けた。いつ、再会のチャンスが訪れるか、わかりもしないのに・・・。
ところが「女」は子供を妊ってしまった。あ・な・たの子を。子を産み、育てるために必死で働いた。時には身体を売ることもしてた。あ・な・たにそっくりな子供を大きくするために・・・。
そしてさらに6年が過ぎたある日、あ・な・たは、またこの「女」に声をかけた、まったく見知らぬ女として・・・・。
(以上、転記しました)
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中嶋朋子さんの朗読と西島さんのパフォーマンス(台詞なしの身体表現のみ)だけの、シンプル且つ鮮烈な舞台で、そのシンプルさ故に、言葉や動きや音や照明のひとつひとつが、心の中の様々な愛憎をリアルに浮き上がらせるような演出(行定勲さん)。
その『(見知らぬ)女』の愛情や背筋が凍り付くような鋭く激しい情念の炎が静かに時に激しく内蔵を抉るように締め付けてくる。中嶋さん、、、やっぱりスゴい(そして、とてもカワイイ…笑)
BGMとして使われているベートーヴェンのピアノソナタ(月光など)が、曲の持つ匂い立つような遷(うつ)ろう色彩の変化と登場人物の揺れ動く感情、沸き上がる狂気がバッチリとリンクしていて、まるでこの舞台の為に書かれたかのように錯覚する程、見る者の心の中をぐいぐいと掻き乱す…。
今回の物語の概要は事前に情報として読み知ってはいたけれど、実際そこにピアニスト役の西島さんがどんな振り付けをしてくるのかとても興味がありました。
西島さんの経歴にもあるように、クラッシックバレエがバックグラウンドにある方だと思っていたので「西洋クラッシックバレエ的なアプローチ?」と思っていた僕ですが、その予想はすっかり外れました(笑)
僕はダンスには全くの素人なので、全く的外れかもしれませんが、、、どんな感じだったか僕なりにガンバって書き出してみると…
西島さんの”絵になる”というか、どんなポーズ立ち振る舞いも洗練された美として魅せる、長年の修練によって体得した『型』のようなセンスは、確かにクラッシックバレイを彷彿とさせると言えばそうなのかも知れませんが、実際には他のどれにも似ていないような独特な世界感を持った振り付けで、ある時は動かない絵やギリシャの彫刻のようであったり、能やバリの伝統芸能のようなスペースを持った動きを見せたり、また時には燃え盛る炎のように動物的な激しさや魔性の妖艶さを感じさせたり。切り絵とか影絵のような不思議な異次元のテクスチャーを持っていて、延々と繰り返す情念の渦と沸々と煮えたぎるマグマのような狂気を、動でなく静で表現した、ダンスというよりはパントマイム的な感じ(うーん伝わるかな?、、、)。
時折ライトで背景に映し出される人物と影との関連性が、漫画アニメ世代の僕にはまさに「ジョジョの不思議な冒険」のスタンドを連想させたりもして、演技•照明•音楽•演出、全てがとても強烈に記憶に残りました。
どちらかと言えば、女性の手紙を読んで後悔する男性にスポットを当てるというより、女性の愛と憎しみにフォーカスしたような印象を受けました。
それにしても、西島さんの振り付けの世界感、スゴい才能を感じました。
益々今後のご活動が楽しみです。
経歴もスゴいのですが、よく見るとなんと生まれは自分と同じ年だったという!(驚)
見えない見えない…若い!(笑)
僕も、腰が〜肩が〜節々が〜とかおジジ臭いこと言ってられないっスねー。
ひゃ〜運動しよ。。。苦笑
会場は満席でしたが、いやーこれがたった2日間限りの舞台とは(今回もアンコールに応えた再演だったとのことですが)もったいないというか、もっと公演日が多くてもいいのではと思ったり、でもこの一期一会的な緊張感は、限定されたセッションでないと生まれないのかなぁとも思ったり、、、(^▽^;)
この物語のピアニストと同じ『男』である自分には、ストーリー的に見終わった後になんとも言えない後味が残りましたが、、、とにもかくにも、とても印象的な舞台でした。
観に行けて良かったです(西島さんありがとう!)
そして近い将来、いつか何かのカタチでコラボしたいな!と、またひとつ新しい夢ができました。
てなことで、、、今日のところはこれにて。にんにん。
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<追記>
ピアニスト吉川隆弘さんは、今年9月にもまた来日します。
今度は長年一緒に演奏して来ているミラノ•スカラ座首席クラリネット奏者ファブリッツィオ•メローニ氏とのデュオコンサートが初めて日本でも実現。会場は東京のイタリア文化会館アニッツリホールとのこと(一般チケット発売7月上旬予定)。
9月1日大垣、9月5日西宮(芸文)、9月8日東京(イタリア文化会館)です。イタリア大使館他後援、イタリー・イン・ジャパン Italy in Japan 2013 公式イベントです。詳細は近々公開とのこと。
吉川さんのソロピアノもさることながら、歌や楽器の伴奏者としてのセンスが素晴らしいので、この公演もまた素晴らしい演奏会になることでしょうね。楽しみですね!
さて私事ながら、、、
約半年程携わっていたプロジェクトも一段落し、久しぶりに家族でのんびりと故郷に帰って来ました。
自宅療養している父の見舞いと孫の顔見せ、また友人との仕事の打ち合わせを兼ねての里帰り。
ちょうど梅雨に入って雨の多い日が続きましたが、それもなんだか長崎らしくて懐かしく、庭の静かに降り注ぐ雨音を聞きながら、咲き始めた紫陽花を眺めたり、いろんな考えを整理したり、子供のころ家族と過ごしていた梅雨の時期を思い出したり。
本を読んだり静かに思考を巡らせるのに、静かな雨は最適だったかも知れませんね。
昨年末危篤状態だった父も今では自宅に戻り療養していて、里帰り最後の2日間には、発病後初めて(酸素ボンベ付きではありますが)泊まりがけの外出もできるまでに回復できたというのは本当に奇跡のようなことで(一時はもう二度と父の声は聞けないのではと覚悟していたから)この神様から頂いた貴重な時間を、心から大切にしたいなと思うばかりです。
まぁ元気になったらなったで、お互い口喧嘩とかしちゃうこともあるのですけれど(笑)
やはり生きていてくれるだけで、ホントに有り難いのです。。。
懐かしい梅雨の雨の匂いも味わい、父に代わって男手の必要な家の掃除など少々やったり、家族旅行時には梅雨とは思えない程の気持ちの良い快晴に恵まれ最高の旅行になったし、あっという間の時間でしたが、身も心もリフレッシュできたように思います。
いつもながらの台詞ですが、どんなに変わっても変わらなくても、故郷はずっとそこにあり続けていて、帰ればやっぱりいつも最高なのです。
もうすぐ満開となる紫陽花。あの日に想いを馳せ、また心新たに、志しをまっすぐに見つめたいと思います。